藤田湘子の「20週俳句入門」を読んだ

アマゾンで売られている俳句のハウツー本の中でも結構評価が高ったためにさっそく買って読んでみた。


簡潔に言えばめちゃくちゃためになった。俳句というモノがどういうものなのか、季語とは何か。そして裏技的な簡単作句法など初歩の初歩の初心者の欲しいアドバイスが詰まっていて、痒い所に手が届く本だったと言えよう。

 

ただ、ただである。

 

 

個人的にはこのハウツー本の作者さんに逆らいたくなってしまうのだ。私が若くて血気盛んな生意気人間だからかもしれない。いくつか自分の首をかしげた点があるためここに紹介する。

 

・約3分の1が作句以前の話である。

これだ。20週間でそこそこの俳句を作れるようにしようと言うのがこの本の内容なのであるが、1~7週ではまだ作句にいたらず、8週間目の講座でやっと「作句へスタート」となっている。

 

俳句に取り組んで、作句までにまさかの約2か月を費やす。え、2か月て。

 

いや、まあ本格派はそうなのかもしれないけれど、ど素人の意見としてはまず下手でもいいから俳句を作ってみて、詩句をいじくる楽しさを覚えるのが先ではないかと思ってしまうのだ。「俳句を詠みたいです」「じゃあ2か月後ね」と言われれば嫌気がさす。

とりあえず触れてみて、駄作でいいから作ってみて、それから細かなテクニックを埋めていくべきなのではないのか。


 ・寺社仏閣を古臭いといって切り捨てる

俳句初心者のやりがちなこととして寺社仏閣へ足を向けてみて俳句を詠むことがあるというが、それを「古臭い」として切り捨てている。そんな古臭いものよりも現代を生きる作者の興味を引くものを描き出すべきみたいに書かれていたが、自分から言わせれば「大きなお世話だ」と思う。

 

パワースポットブームで今一度、寺社仏閣は見直されつつあるし、私、自分自身が神社というものに関心を持っている。それに、「古い寺社」はむしろ新しい概念だと思わないか? 21世紀の人間だからこそ思う寺社への考えのようなものはあると思うのだ。100年前の神社と今の神社では我々の目に映る様も大いに違うだろう。こればっかりは激おこぷんぷん丸だった。

 

・外来カタカナ語を浅薄と言って切り捨てる。

これがわからない。寺社仏閣は古臭いと言っておきながら、カタカナ語は浅薄なのか。言葉に重みがないというが、効果的に用いればかっこよく締まるのがカタカナ語でないか?

 

ひぐらしアポトーシスの意を知れり        秋雷

 

もうカッコいい。単にアポトーシスって言いたかっただけだけど。この本だと最も重みをもつ言葉を漢字としているが、ではこれが細胞死だったらどうか。

 

ひぐらしや細胞死の意を知りけり

 

まあ、悪くはない。結局「死」という漢字が良い仕事をしている。なるほど漢字は重いというのも一理ある。でもアポトーシスと言った時の得体のしれなさというか、不気味さのようなものは消え去ったのではないか。

 

自分としては、新しい俳句を詠みたいと思っている。21世紀の俳句だ。ほとんどの人がスマホを持っていて、ネットが複雑怪奇に発達し、ドローンが空を飛んで、そして人は何故か孤独に陥る。そんな21世紀の俳句が詠みたい。アポトーシスとかスーパーノヴァとかニュートリノとかマニピュレーターとか俳句に入れたい。だって、20世紀以前の俳句なら20世紀以前の人間がさんざん詠んできたはずなんだ。

 

平成生まれの、ゆとり世代の、山奥ニートの、山奥ピエールにしか詠めない俳句を詠みたい。誰にでも詠める句なら私が詠む必要はない。

 

むしろ私はアルファベットもぶちこんで良いと思う。この本では言及されたなかったけど。

 

ひぐらしや“apoptosis”の意を知れり

 

超カッコいい。ヤバい。もうカッコいい。

 

まあ、私の場合は単に厨二病こじらせているだけなんだけど。ただ「これはダメ」って言いきって可能性を摘むのはどうなのかなって。カタカナ語にはカタカナ語の可能性があるわけで、それはそれで良いんじゃない? って私は思う。それに、厨二病こじらせてるのが私の特徴なら、その特徴発揮していかないとむしろ損じゃろ?

若さだろうか。青さだろうか。それもまた私の一部だろう。

 

 

 

他にも「自由律俳句は俳句じゃない」とか「無季俳句も俳句だとは思うけど自分は作らないし君らも手を出すな」とか制約っぽいことは多く書かれているが、この辺は私も同意かな。個人的には自由律よりも無季俳句の方がダメな気がするけど。

 

まあ、いくつか作者のいうことに逆らいたくはなるんだけど、でも良い内容であったことは確かだ。すごく勉強になった。とくに「二物衝撃」。この概念は知らなかったし、なるほどそうやって俳句って楽しむのかと納得した。この本読んだだけで10レベルくらいは俳句の腕が上がったと思う。

 

自分の納得できるところだけ取り入れて、納得できないところは逆らえばいいと思う。それもまた人生。それもまた山奥ニート。自由の風の下でしか生きられぬ身。そんなものなのだろう。

 

貴兄貴姉らもこの本を読んで俳句の詠み方を学べばいい。詩句をいじることは、生活を豊かにする。

 

角川学芸ブックス  新版 20週俳句入門

角川学芸ブックス 新版 20週俳句入門