ももたろう
何のひねりもない普通の桃太郎なので読む価値はあまりない。
両親に言えば、嘘だろうと笑われるだろうが――私は自分の生まれた時の事を明確に覚えている。
甘い香りのする真っ暗な空間にいた。後から思い返せばあれは巨大な桃の中なのだが、その当時の私は母の胎と桃のなかの空洞との区別はついていない。やけに居心地の良かったことだけはよく記憶している。
その優しい暗黒にいきなり光が差しこんだ。包丁の鋭い刃が、目の前すぐまで迫っていた。私は焦ることもせず、その刃をじっと見つめた。
桃が真っ二つに切り裂かれ、私は世界に生まれた。目の前には老夫婦――私の両親がいた。驚いた顔で私を眺めていて、私も彼らをぼんやり見やった。
こうして生まれ、老夫婦に育てられ――今に至る。
「父上、母上、いってまいります」
私がそういうと、元よりしわだらけの顔をさらにくしゃくしゃにして、二人は私の手を握った。
「気を付けるんだよ」
「嫌になったらすぐ帰ってきなさい」
「私たちのことは気にしないで良いから」
「きびだんごを作ったから、行く道で食べて」
二人から矢継ぎ早に言葉をかけられる。少し胸が痛むが、私の意志は変わらない。
「必ずや鬼を退治してまいります」
それだけ言って、私は家を出た。両親の声が聞こえるが、もう振り返らない。
いつのころからか、私は自分の存在の意味というものを考え始めた。
両親はしきりに「子供のいない私らに神様が使わして下さった子だ」と私のことを猫かわいがりしていたが、ただそれだけの理由で桃から生まれたとは思えなかった。私は普通の子供よりも成長が早く、それも強い力を持っていた。
両親は年老いていたため、幼い私は一人で遊ぶことが多かった。人気のない野山は私の都合のいい遊び場だった。木の実を的に見立てて石を投げたり、岩を敵に見立ててごっこ遊びの戦いを挑んだ。いつの日からか、石を投げれば木の実を貫き、岩を叩けばそれが砕け散るようになった。
異常極まりない出自に、人とは思えない怪力。
私が、自分は何らかの使命を帯びてこの世界に生まれたのだと考え始めるのに、そう時間はかからなかった。しかし何の使命であるか見当もつかず、やきもきして過ごした。
近隣を鬼が荒らしまわっている。
仕事から帰ってくるなり、父が顔面蒼白で母にそう言った。その時、私の脳裏に電光が走った。
かつて神代の時代、伊弉諾尊が伊弉冉尊の遣わした鬼に追われた時に、その鬼を退けるために投げたのが桃の枝だった。
であれば桃の実から生まれた私は、人に害なす鬼を退け人の世を守るのが使命なのではないか。そう思った。
両親に鬼を倒しに行くと伝えた。当然のように止められた。しかし私の意志は固かった。ずっと粘って説得し続け、最終的には認めてもらった。
わずか1200文字書いて力尽きる。書きたくないものを無理やり書くことのストレス半端ない。
面白く文章を書く方法は何だろうか。主人公になり切ることか?
まだ設定とプロット練るだけならともかく、文章書くのが嫌すぎて嫌すぎてしょうがないんだが。
うーん。風景描写少ないよなあ。風景に興味なさ過ぎなんだよ。ちょっと教本読むよりも手本にしたい小説を何度も読んで文体を解析する方が先かもしれんね。っていうかどっちも同時進行すればいいんよね。
俳句は簡単なのになあ。でも、なんか1コわかってないだけで、それがわかったら全て氷解するんじゃないかなって疑いはあるんだけど。
白桃や深夜の作業捗らず 秋雷
まあー、たぶんー、なんとなく原因には心当たりがあるな。うん。その辺の話なんだと思う