お金が欲しいなと思う今日この頃

お金が欲しい。

 

できればいっぱい欲しい。

 

でも、労苦なく得られるお金は別に要らない。

 

 

私はギャンブルをやらない。一切やらない。ギャンブルで得たお金などあぶく銭にすぎぬ。だから100%勝ち続けるとしても別にやりたくない。どうでもいい。どうせ勝てないだろうし、勝ったところで空虚でしかない。だから私にとってギャンブルは実質「勝ち」がないし「価値」がない。

 

労働によって得られるお金は労働に対する評価だ。どれだけ社会に貢献したかという証だとも言える。反社会的な行いによってお金を得るのは論外だが、普通に仕事をして得られるお金はだいたい尊いと思うのだ。

 

ニートが何を言ったところで無職のうわごとでしかない。

 

会社の社長とかがそれっぽいことを言うと、ありがたがられたりする。そりゃそうだ。説得力が違う。

 

だから私はお金を稼ぎたい。

 

それは資本主義経済において、私がどれだけ社会に貢献してきたか、どれだけ人々の需要に応えて来たかという指針であり、私がこの世界に存在する価値を示してくれると思うのだ。

 

偉そうにここで講釈を垂れてみても、無職のたわごとに過ぎぬ。説得力はない。

 

 

ただ、私に何ができるのか。

 

親元で働いていた頃から――いや、ともすれば学生のころから、自分がトロくさいという自覚があった。時と場合によっては足手まといにしかならない事とてある。その上で、集団に馴染むのが苦手な人種である。せめて役に立たないなら立たないで、ムードメーカーくらいになれればいいのに。私は基本的に、暗くて愛想が無くて、ハシッコにいる奴である。まともに働いても上手い事いく自信がない。

 

何ができるのか――何もできない。手先も不器用で、体力もなく、集中力もなく、人に馴染めず、無配慮で、頭の巡りもトロい、私は、何もできない。

 

せめて手先が器用で性格が雑でさえなければ。精緻な作業が得意なら、職人業に就きたかった。人づきあいが苦手でも、職人ならそれらしいし。「100」と言われれば「95~105」くらいだと思っている私には職人業は難しいだろう。「100」は「100」だ。ピタリと精密に「100」を作れなければならない。何なら「100.00」でなければならない。それは私には難しすぎる。

 

何もできないグズに残された最後の可能性が執筆業である。よく言われる。「執筆業は誰にでもできる仕事だからこそ、他の仕事をしてからするべき」と。絵や音楽と違って、文章は誰でも書ける。だいたいみんな、小学校で作文の仕方を習うだろう。だから小学生だって執筆家になる可能性はある。

 

私はもうすでに最後の可能性にすがっている。

 

早すぎる。

 

でももう、いい。もういいのだ。

 

自分のことを何かの才能があるんじゃないかと思ってみるのは20歳になったあたりで辞めた。もう何も思うことは無い。凡人でかつグズなのだ。ただの凡人なら普通に働けばいいものを。グズでも才能のあるグズなら才能を生かせばいいものを。

 

もういい、期待するのは飽きた。もう何も思うことは無い。

 

ただ積む。

 

石を積む。

 

賽の河原の子供のように、ただ石を積む。無為かもしれぬ。無駄かもしれぬ。でも今の私はとりあえず石を積むことしかできぬ。崩れるかもしれぬ。知ったことは無い。

 

石が崩れて、泣いて、そしてそれを哀れに思った地蔵に救ってもらうことは求めていない。それは意味がない。そんなデウスエクスマキナは求めていない。

 

私は石を積んで山を作る。

 

無理だと笑われようと、鬼に蹴散らされようと。

 

知るものか。私は山を作る。

 

山の頂上から、見下ろして、全てを睥睨して、笑ってやるのだ。

 

私のやろうとしていることは、つまりはそういうことだ。

 

 

畜生、私の運命決めてる奴、絶対許さないからな。ファッキン運命だぜ。でも私はその運命とやらの首筋に牙突き立ててそっ首圧し折ってやる。期待はしないが絶望もしねえ。首を吊るにはまだ早すぎる時刻だ。ならただじっと勝機のために牙を磨いて爪を研ぐまで。

 

道なき道をいく。私の通った後が道だ。それが獣道だろうが鬼道だろうが知ったことはねえ。人生だとか運命だとか、私をおちょくるそういうのを全部ハッ倒してやる。知るかよ莫迦。ここらでどんでん返しが無きゃ何も面白くねーだろーがよ。

 

私に絡みついてる何かよくわからないもん全部引きちぎって食ってやる。私は負けない。負けさえしなければいずれ勝てる。無茶苦茶なことを言ってるってことは知っている。でも無茶苦茶が通んなきゃ詰まんねーじゃねえかよ。

 

どうせ一回しかねえ人生なんだ。面白く生きようぜ。その結果が地獄だか修羅だかでも知らねえよ。知ったことねえよ。どうせ何もしなけりゃ地獄行きなんだから、それならあがいてから地獄行くわ。でもタダでは堕ちねえよ。死ぬなら爪痕残して死んでやる。

 

凍てる闇染みこみ我は鬼に成る                   秋雷