山奥に辿り着くまでの途上で、ホントにあった話

私は、和歌山の端から目的の駅まで向かう電車に乗った。

 

和歌山県は若者の流失率ナンバー1だと聞いていたが、ガラリとした車内には、若い男が何人か乗っていた。和歌山県にも若い男はいるのだな、と他人事のように思った。

 

しばらく本を読んでいたが、ある程度読み進めたあたりで疲れてしまった。昔は一冊読み終わるまで本を閉じることは無かったのにと苦笑し、顔を上げてぼんやりと周囲を見た。

 

若い男がいた。

 

たくさんいた。

 

今やこの電車の乗客においては若い男以外の方が少ない。空いている車内に点々といる乗客の過半数は若い男だった。

 

平日の昼間に?

 

それも、若いのは男だけだった。若い男がたくさんいれば若い女もいそうなものだが、見渡す限り、男ばかりなのだ。異常な空間に思えた。

 

私はぶしつけに一人の男の顔を見つめた。視線に気づいたのか、その男と目が合って、顔をそらした。

 

その時気づいた。

 

彼からすれば、私も不可思議な若い男の一人なのだと。

 

何か作為的なものを感じた。まるで私がこの電車を選んで乗ったのではなく、電車が私を選んで乗せたような気持ちになった。

 

何だか不安になった。

 

結局、電車は終点に着き、私を含め若い男たちはみんなそこで降りた。何かこの田舎で催しでもあったのだろうと思うのが妥当か。そう思うことにした。

 

だが、不穏な気分は晴れなかった。

 

 

今回、山奥へ帰る道中にあったホントの話。何だったんだろう。20代前半くらいの子がたくさんいたんだけど。大学の何か? でも男ばっかりなんだよな……?