あえて暗黒の学生時代についてここに記す

私が人生の内で一番帰りたくない時期が学生の頃だ。よく学生時代に帰りたいなどと言う人のことが信じられない。今がサイコーだ。学生時代なんて絶対戻りたくない。

 

小学生の時はヒエラルキー最下位だった。運動ができないからだ。小学生において運動能力に欠け、体格も劣り、気弱な子供というのは最も軽んじられる存在である。私もそのように扱われた。まあ、いじめられたわけではないのでヨシとする。

 

中学生になって、結構いい私立の学校に入れてもらった。名門の中高一貫校だ。

 

挫折した。

 

小学校までの自分にとって学業とは特に勉強しなくても勝手に理解していくものだった。授業さえきいていれば全て理解できる。それが中学では情報量が激増して不可能になった。もとよりADHD気味の私は「ノートをとったり」「先生の話をちゃんと聞いたり」「宿題をしたり」することが苦手だ。要するに、勉強に向いてないのだ、私は。それをただ自分の持つ高いポテンシャルだけでごまかしてきたが、そのごまかしがきかなくなった。

 

小学校までは賢い賢いと言われて自分の知能にある種の自信を持っていたが故に、ここでの挫折は本当によく効いた。「勉強だけはできる子」が「勉強すらできない子」になったら、跡には何も残らないのだ。

 

その辺りで小説を書きはじめる。現実逃避としての創作だった。

 

さらに中学ではいじめを受ける。男女問わずキモイのウザいの色々言われて邪険に扱われた。まあ、暴力という暴力もそこまでは振るわれなかった(ちょっとだけだった)し、別にお金をゆすり取られたわけでもなく、よくある、虫を食わされたの、便器を舐めさせられたの、水をぶっかけられたの、弁当箱を捨てられたの……そういうヘヴィなのは無かった。まあ、いじめと言ってもスーパーライトな、ともすれば、心の強い者なら歯牙にもかけないレベルのものだったろう。でも私にとっては辛かった。とくに心の支えだった知能の高さがゆらいでいる時だったから。自分というものが失われていくような恐怖があった。

 

これといった特技もなく、ほとんど全ての能力が低く、他人には邪険に扱われ、それって私の存在意義はなんなんだろう。

 

せめて心の頼りになる異能や特技があれば。せめて人並みの能力があれば。せめて他人から愛され親しまれれば。その全て当てはまらなかった私は、じゃあ何なんだってなった。

 

私って何? クズ?

 

その「私って何?」という空虚な問いを埋めるために創作をしていた。とりあえず、どんな駄作であれ、オリジナル作品であれば私にしか書けないものだ。作品だけが私の存在を認めてくれた。

私でなければ書けない作品たちは、私がここに存在しているということの、確かな証明になる。

 

この辺では、学校行くだけで体調を崩したりした。精神的に参ってたんだろう。

 

高校になっていじめは止んだ。さすが名門校だけはある。高校生にもなっていじめなんてかっこ悪いと思ったのだろうか。それとも大学受験で忙しいからそんなことしている暇もなかったのだろうか。それまで積極的に罵詈雑言を浴びせて来たクラスメイトは私をシカトするようになった。まあ、そのころの私は空気みたいなもので、それまでに比べれば気楽なものだ。

 

だが勉強の方は大学受験が近づくにつれてとんと苛烈になり、それに置き去りにされている私は非常に苦しんだ。進学校において勉強ができない者はヒエラルキー最下位に位置する。結局最下位から最下位へいっただけなのだ。

 

私の親も苦しんだろう。小学校までは神童のごとく賢い自慢の息子だったのだ。それがいざ名門校にいれてみたら最下層。いつかきっと返り咲いてくれると信じて6年すごし、結局最下層は最下層のままだった。絶望じゃないか。

 

自分としても勉強できるようになりたかったが、できなかった。あの頃はただただ辛かった。今思えば、勉学に向いてないのだから無理にする必要なかったろうと思うが、あの頃はそんなことに気づく余裕すらない。ただウゴウゴと泥の中を這うような生活だった。

 

あと、これは笑い話なのだが、そのころ、クラスに友達が一人もいなかった。

 

よく体育の時間に「二人組になってキャッチボールしろ」と準備運動がてら教師に命じられる。あれ。私はいつもぽつねんと一人ぼっちだった。クラスの男子は偶数人いるはずなのに。三人組を作ってる奴がいるわけだ。

 

こういう時、私は一人でとてとてとボールを持ってゆき、体育館の壁にボールを投げて跳ね返ってきたのをキャッチするという一人キャッチボールをする。無様だなあと思うけど、その時は他にどうしようもなかった。

 

あと、何かの授業で「好きなもの同士で4,5人の斑を作って○○について調べて発表しろ」というのがあった。次々に班が作られていく中、私はずっと一人でいた。いたたまれなくなって教師の所に行き、「好きな人がいないので一人で斑やらせてください」と直談判した。通った。

 

いや、そこは人数の少ない班に組み込むとかしろよ教師。

 

まあ、それで一人で調べて一人で原稿書いて一人で発表した。足手まといがいないので私の発表が一番うまかった。当然だ。私は当時、文芸部兼弁論部員だ。弁論部は私しかいないし、先生も指導してくれなかったけど。でも文章を書くことと人前でしゃべることはクラスで最も長けていたはずだ。その他雑魚どもが何人束になろうが私一人が一番上手なのだ。

 

文芸部・弁論部では、レベルの低い大会をやたら荒らしまわっていた。私は全国大会に行けるレベルではなかったが、地方の小さな大会程度なら猛威を振るえるくらいの実力があった。最もたちが悪い実力と言えよう。

 

文芸部では1回の大会で十数作入賞とかわけわからないことをしでかしていた。単に大会のルールの隙を突いただけだったのだが。その大会では「散文」「詩」「短歌」「俳句」「随筆」と様々な部門に分かれていて、そのうち自分の得意とするものを送るのが普通であるが、私は全部門に作品を送った。得意も不得意もない。1つの部門しか送っちゃダメなんてルールないのだもの。今まで2つくらいの部門にまたがって送ってくるものはいたが全部門に最大数の作品を送るなどというやり口をする者はあの大会で初めてだったそうな。おかげで賞金がホクホクだった。予算の無い地方大会なので、入賞しても図書カード1000円くらいしかもらえないのだが、何作も入賞させることで1万円以上もらっていた。たちが悪い。それで最優秀賞とかはとれないのだからクズの極みである。そこまでの実力はないのだ。

 

弁論部ではとある大会のみ三回連続最優秀とかやっていた。地方大会であって非常にレベルが低いと言うのと、単に自分との相性がいいというだけだったが。それでも私の「勝つために手段を選ばない」というスタンスはあのころ築いた。ルール違反でさえなければ何してもいい。たとえば原稿を確認しようとする弁士にやたらめった話しかけて原稿を確認させないとか。緊張するなあと何度も連呼して相手に緊張を刷り込むとか。油断させるために前回最優秀とっているのを伏せて「あまりこういうの慣れてないんですよ~」と素人感を出してみるだとか。

うーん、こすい。卑怯である。

 

まあ、なんだ。勝つために手段を選ばないというよりは「大して労せず最大限の利益を享受する」ことに全振りしていたなあ、と思う。努力が嫌いだ。文芸でも弁論でもあんまり努力はしなかった。故に実力不足ではあったが、実力の不足する状態で利益を最大化させるための努力は惜しまなかった。ありていに言ってクズである。

 

余談であるが私は狐のイメージが好きだ。他の獣を知恵だけで出し抜こうとする。実力はないくせして、悪知恵で何とかしようとするそのスタンス、私らしい。虎の威を借る狐の故事が大好きだ。西洋の童話に出てくる小ずるいきつねも好きだ。

 

まー、学生の頃の話はこんなところだろうか。

結局、大学受験は失敗して親元で働くことになった。思いっきり肉体労働だ。ここでは小ずるい小手先騙しみたいな、私の悪知恵は通用しない。普通に身体を動かして普通に働かなければならない。あそこで学んだのは、どうやら自分は極度のマイペースで、ああいった肉体労働すら向いてないってことと、あとお金を稼ぐこと、社会と関りを持つことなどだ。社会勉強としては最高の物だった。あそこで働いてなかったらクズのまま大人になっていただろう。たぶん共生舎でも受け入れられてないと思う。

 

この点において親にはとても感謝している。親元で学んだものは私にとって大切な財産だ。正直言って学生すっとばしてすぐ働いた方が良かったんじゃないかと思うけど。そういうのもわからなかったんだよな。あの時、何も自分のことが見えなかった。

 

 

 今やその親元すら離れて山奥でニートしている。読者はこれを退化ととるだろうか? 自分は進歩だと思う。今、私は親の庇護下を離れて自分で暮らしている。学生時代に見つからなかったものを、今探している。自分の可能性ってやつだ。親元で働き続けていても可能性は芽生えなかっただろう。親の仕事を継いだとて、私では親は超えられない。

 

少年は父親を倒して大人になる。

 

通過儀礼だ。だがきっとあの仕事で私が私の父親を超えることは無い。可能性がない。今、私は父親を超える可能性を探している。小説かもしれないし、それ以外かもしれない。でもきっとここでなら見つかると思う。

 

クズだ、私は。でもただのクズじゃない。きっとできるクズだ。可能性のあるクズだ。ここに来て、初めて戦うのだ。可能性を武器に。今まで逃げて来た運命とやらに向かい合って。小ずるいだけが取柄だった私が、初めて努力によって結果を勝ち取るんだ。


狐火の空真っ黒に焦がしけり      秋雷

 

狐火なんか見たことねえけどな! 季節も冬だし! でも狐で詠みたかったからヨシ!

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