年末感皆無
年末……?
今って年末なのか。もう12月29日? あと三日もすれば新年?
信じられない。本当に年末なのか? 年末の自覚がないのだが。
もっと幼いころの年末には、何か得体のしれないワクワク感みたいなのがあった。何も確約されてはいないけれど、特別な何かが訪れてくれそうな予感。みたいな、ワクワク。心の中に波が立って、説明不能の期待感で小さな体の指の先まで満たされていた。
いつから期待するのを辞めたんだろう。
新年がくる。今の私にとってそれはただ明日が来るのと同じようなものだ。何も特別な感じがしないし、何にも期待していない。ただ時間が流れた、ただ一歳分の歳をとったというだけ。
つまらない、人間に成り下がったものだ。
何でもかんでも子供のころの方が良かったと言ってしまうのは好きじゃないのだけれど、でも心の中の波がじわじわと小さくなっていくのは感じている。ただ平坦になっていき、何にも感動せず、何も期待しない大人になっていく。世界がモノクロへ堕ちていく。
大人といえば聞こえがいいが、今の私は、つまらないオッサンじゃないか。
つまらないオッサン。なんと恐ろしい響きか。
くそ、せめて面白いオッサンでありたい……。
新年が来る。迫っている。私には期待もなく覚悟もなく、ベルトコンベアに載せられた段ボール箱みたいに勝手に新年の世界へ流されていく。そんなんでいいのか。
薄氷や今年が死ぬ時が迫る 秋雷
何も祈ることも無いし、何も期待しないし、何の覚悟も無い。
でも、来年は、来年こそは、今年の延長線上でなくしてやる。力ずくで、来年の中に特別な日を引きずり出してやる。そうしよう。そうするのだ。
来年の私は面白いオッサンになるのだ。