深夜に句会しました。

深夜に男たちでリビングにたむろして、色々な話をしていた。こういう、何となしに思ってることを言い合う夜会は楽しくて楽しくてしょうがない。普通、こういう夜会は昼夜逆転した私より若い子とやってることが多いのだけれど、今日は私よりかなり年上の方ばかりと話し合っていた。勉強になる。

 

で、もう2時か、って頃合いになって、急に私が昔俳句詠んでた話題になった。

 

「ピエール君、じゃあここで一句」

 

FUJIさん(共生舎の理事の方、久々に共生舎に遊びに来ていて、この数時間後にまた発たれる)から無茶ぶりを受ける。割と聞きなれた無茶ぶりであるが、推敲タイプの私には辛いものがあるぜ……。

 

そもそも俳句はそれ一つで完成された文芸作品である。十七音しかないから勘違いされがちだが、そんな簡単に名句が現れるわけがない。よほどの名俳人でもない限り、即興でまともな俳句を詠めると思えないのだ。

 

ですが、まあ、せっかくリクエストされたんで、歳時記取り出して頭をひねることに。ついでだし一緒に夜会で話してたヨシさんも巻き込む。深夜二時にいきなり句会がはじまる。

 

歳時記片手に、「この季語カッコ良くないすか」「この季語で詠みたいなあ」とか言い合うだけでも中々に楽しめる。女子二人で服を買いにいくとこんな感じかなと思った。まあ、服なんて布切れ物色するより、季語選びしている私たちの方がずっと知的で高尚でクールなのだけれどな。

 

ピ「今、雨降ってるし。『秋の雨』で詠みましょうかね」

 

ヨ「それピエールらしいから却下」

 

ヨシさんこのブログを読まれているから全てお見通しである。たしかに「(季節)+の雨」とか「(季節)の雷」とかで詠みまくったよなぁ……

 

それにしても、数か月も詠まないと俳句脳衰えるもんだ。全然思いつかない。

 

結構、時間をかけてひねり出したのがこの三句

・雨去って墓参りする人の列

 

・壁登る孤独ばかりの鉦叩

 

・鬼灯や小型の魔女が背伸びして           秋雷

 

割と最後の句は良い感じに詠めた気がする。しかし、この最後の句をFUJIさんに見せたら、

 

「中七の『小型の』がもったいなくない? 『背伸びして』だけで『小型』の意味内包してるよ」と。図星である。めっちゃ的確な評。さすが。

 

急遽、別の四文字を推敲することに。で、その結果できたのが

 

・鬼灯や双子の魔女が背伸びして           秋雷

 

『双子の』の方が季語の鬼灯にもかかってくるし、キュート。こっちのが圧倒的に良いね。個人的にかなりお気に入りで、ひっさびさに納得のいく句が詠めたので大満足だ。

 

ちなみにヨシさんは私が4文字推敲する前にさらりと詠み終えていた。

 

・桐一葉光年越えて今こそ           ヨシ

 

以前共生舎俳句部「梅雨の句」で「メメントモリ」という語を用いてヨシさんは俳句を詠まれていた。この厨二カッコよさ。私がやりたいと思うことを先んじてやってしまうのがヨシさんである。悔しい。

 

今回も「光年」という俳句ではなかなか用いられ無さそうな語を織り込んできた。これは21世紀の句だなと思う。下五が字足らずなのも含めて非常に挑戦的。20世紀以前の句を未だに詠んでる奴なんなの? もう21世紀だよ。とでも言いたげな印象すら受ける。

 

たしかに、20世紀以前の俳句なら20世紀以前の人たちがさんざん詠んできたはずなんだ。今あえて俳句なんてクラシカルな文芸に手を出すなら、クラシカルな手法のままじゃきっと20世紀以前の名句には勝てないだろう。

 

「桐一葉」という美しくクラシカルな和語を上五に置きつつも、中七で「光年」という俳句では新たな表現を取り入れている。さらに下五では「今こそ――」と一字足りないことで、もう一歩届かない感じ、焦燥感というか、それでもあと一歩まで迫っているこのじれったさ……みたいなのを感じる、様に思った。

 

ヨシさんのこの挑んでいく感じ、僕は好きだなあ。むしろ僕の方がこじんまりした句じゃなくて実験的な句を詠んでいかないといけない気がするが……。

 

で、FUJIさんはFUJIさんで歳時記すら開かずに一句詠んでいた。びっくりする。

 

・銀月に響きわたりし山の川             FUJI

 

あー、上手いなと思う。視覚情報に聴覚情報を合わせてきている。目は月を見ているが、耳には川のせせらぎが入り込んでくる。それよりもこの人は何で夜に山の川のそばで月を眺めているんだろう。何があったのだろうか。何を思っているのだろうか。物語を感じさせる。

 

この辺、私が昔詠んだお気に入りの句

・夜夜中海原一面海月咲く

・蛍浮く深山の闇に染められぬ

と雰囲気が似ていると思う。上記二句も、真夜中に海や川のそばにいる句だ。深夜に何を思って水場に引き寄せられているのか。どうにもダークさを感じてしまう。

 

もしかしてFUJIさんと私は似てるところあるのかなー、なんて思った。

 

いやー、男3人でキャッキャ言いながら句会。インテリジェンスだしクールだし、何より楽しい! こんな宝物みたいな時間があっていいのか、って思った。僕にとっては何物にも代えがたい時間でしたよ。お二人ともお付き合いいただきありがとうございました。

 

最後に今一句詠んで筆をおこう。

 

枕抱きささめく子らや秋黴雨             秋雷

 

あら、また私にしてはかわいらしい句を。路線変更したのだろうか。以前の尖り具合もあれはあれで必要な私の要素なんだけど。